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図書館活用講座(中級編)「辞書があると、読書は楽しい。」を開催しました

作成日:2021年12月28日

  令和3年12月4日(土曜日)、辞書編さん者の飯間浩明さんをお迎えし、 図書館活用講座(中級編)「辞書があると、読書は楽しい。」を開催しました

 昨年10月には、文字・活字文化の日記念講演会「ことばを見つける、ことばを紡ぐ」で、作家の三浦しをんさんと、笑いも交えたクロストークを展開された飯間浩明さん。今回はどんな読書と辞書のお話しだったのでしょうか。

普段手に取らない本を読む 

 飯間さんの最近の読書のお話しから始まりました。読売新聞の読書委員を2年間務めていた飯間さんは、書評を書くために、新刊書を読む日々が続いていたそうです。本当は武者小路実篤や志賀直哉が好みだけど、出版されてから3ヵ月以内の新刊書という制約があり、なかなか読み進まず、苦しい読書だったそうです。しかし、普段は手に取らない本を読むことで、改めて気づかされることも多く、得がたい経験であったそうです。  

 また、飯間さんは1ヵ月に読む本は10冊に満たないそうです。読書の要領が悪いかも?と苦笑されましたが、それは目次から最後までしっかりと「本をなめるように読む」からであり、実はこれが「辞書が読書を楽しくする」コツにもつながっていきます。

                   katsuyoukouza_001.jpg                                                最近の読書について語る飯間さん 

国語辞書を知っていますか?

 最近は紙の辞書だけでなく、スマホのアプリ版もあります。分からない言葉をグーグルで検索する、という方もいるでしょうが、紙の辞書には、デジタルでは出てこないことがたくさん書かれているのです。国語辞書にもそれぞれ個性がある、その特徴を飯間さんの視点で教えてくださいました。

 例えば、「言葉に関して自由に寛容に考えており、言葉を否定する説明をしない」辞書や、「長文で時に皮肉も混じる語釈に特徴がある」辞書など紹介がありました。飯間さんが編さん者である『三省堂国語辞典』では、できるだけ短く簡潔で要点を押さえた説明に徹しています。

 そして、飯間さんは、一例として「恋」という言葉を取り上げ、各辞書を引き比べながら、その違いや個性を語ってくれました。古典の例文が多い辞書、明治時代以降の例文が多い辞書などの特徴もあげて、読書にはどんな辞書がいいのかは「読んでいる本の内容に関わってくる」と述べ、本によって辞書を「とっかえひっかえ」することをお勧めされました。

国語辞書をつくる

 次に、飯間さんが編さん者である『三省堂国語辞典』のできるまでを教えてくださいました。12月に刊行される第八版は、なんと改訂に8年の歳月がかかったそうです。その8年間の改訂には、どんな過程があったのかを順を追って説明がありました。まず、まだ辞書に載っていない言葉を集める「用例採集」を経て、それらの言葉が世の中に定着しているかどうかなどを踏まえ、辞書に載せるか「取捨選択」をします。そうして「語釈執筆」に取り掛かります。さらに、旧版の手入れもして約2万項目を書き換えしたそうです。飯間さんは、「印刷してから載せない方が良かった、などと気づくことがたくさんある」と、一冊の辞書が生まれるまでの苦労を教えてくださいました。

 そうした苦労の手助けとなったのが、初版編さん者、見坊豪紀さん。東京八王子の三省堂流通センターには、見坊さんが「用例採集」をして作成した145万枚もの用例カードが保存されています。この145万枚というのは前人未踏の数字で、飯間さんでも「今から死ぬまで集めても10万枚」というから驚きです。この「見坊カード」には、どこでその言葉を採取したかも記されており、言葉に疑問がわいた時にはこのカードにあたって検証することもあったそうです。このような辞書編さん者の仕事の裏側も明かしてくださり、ますます辞書に興味が掻き立てられました。

私の本の読み方

 飯間さんは読書をする時は「辞書の材料にならないかな」と思って本を読んでいるそうです。それはどんな読み方なのかを、『科学オタがマイナスイオンの部署に異動しました』(朱野帰子著)という1冊の本を取り上げて、その本の文章から気になる言葉を引きながら紹介してくれました。例えば「晶癖」(しょうへき)という言葉。辞書を引いてみると、これが「結晶の外形が異なる現象」という意味だと分かり、途端にその文章が腑に落ちるそうです。その時、専門的な言葉なら『広辞苑』や『大辞林』というように、調べる言葉に合わせて辞書を選ぶのもコツだそうです。

 飯間さんは他にも「パーテーション」、「妊友」、「ネットで検索したら落ちてた」、「インチキ」という言葉も気になったそうです。一見、違和感がないかもしれませんが、これらはまだ辞書に載っていなかったり、これまでとは違う使い方をされている言葉であったりします。億劫がらずに辞書を引くことで、辞書が読書を楽しくしてくれます。ぜひお気に入りの「マイ辞書」をもってください、とメッセージをいただき、会場のみなさんの「もっと聞きたい」との後ろ髪を引かれながらも、講座は締めくくられました。

 質疑応答では、待ちかねたようにたくさんの手が挙がりました。その一つ一つに丁寧に応じてくださいました。参加された方からは、「しばらく開いていない辞書を読んでみようと思いました」、「これからの生活に生かしたい」などの感想をいただきました。

 katsuyoukouza_002.jpg                                               それぞれの辞書の特徴をわかりやすくお話してくださいました