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「本で旅をしよう!」〜図書館員がオススメする本〜 第4回

作成日:2020年9月16日

 少しずつ旅行に出かける人も増えているようですが、まだまだ気を使いながらの旅行になりそうですね。出かけるのを躊躇している人もいることでしょう。そんな人のために「本で旅をしよう!」企画はもう少し続きます!

〜ローカル線で行こう〜

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『ローカル線 −なつかしくて、あたたかい風景−』遠藤純写真(ピエ・ブックス)

 昔懐かしい国鉄、地下鉄、私鉄の車両を”お色直し”して「こんなのまだ走ってるんだ」と郷愁を漂わせる地方の鉄道、いわゆるローカル線。
 最新車両の新幹線、「ななつ星」や「四季島」などの超豪華列車とは、まるで別の世界。たった1両の気動車がうなりを上げて走る姿は、見ても乗っても楽しくなります。
 写真好きな方は、数100分の1秒の1枚を撮るため、駅、鉄橋、カーブ、登り坂に下り坂、踏切、跨線橋など、季節を選び、アングルや背景にこだわり、他人には決して言わない自分だけの撮影ポイントがあって、今日もまた出かけて行くのです。
 この写真集は、ページをめくるたびに、あなたの旅心をきっとくすぐることでしょう。

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『出発進行!里山トロッコ列車−小湊鐵道沿線の旅−』かこさとし作絵(偕成社)

 そして子ども向けには、こちらがおススメ。東京から1時間、JR内房線五井駅から始まるローカル線「小湊鉄道」が舞台。旧国鉄の古い気動車が今も健在で、この絵本では開放型展望車のトロッコ列車で、のんびりゆったり田園風景が楽しめます。巻末には大人向けに沿線ガイドと解説も多数掲載されています。

 それでは親子ご一緒に……、「ローカル線発車しま〜す!」(M.K)

 

〜森見登美彦と京都〜

 外出がままならない日々、せめて頭と心は自由に解き放ち、想像の世界を縦横無尽に旅したいものです。旅と言えば、京都。とはいえ、京都を舞台にした作品は枚挙にいとまがありません。

 そこで今回おすすめするのは、森見登美彦氏が京都市中で繰り広げるファンタジー世界への旅。

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『夜は短し歩けよ乙女』森見登美彦著(角川書店)

 アニメ映画にもなった『夜は短し歩けよ乙女』は、「黒髪の乙女」に恋する「先輩」のお話。個性溢れる登場人物と奇想天外な出来事が、軽妙洒脱な文章で綴られています。作品に登場する下鴨神社の糺の森で開かれる古本市や、ラストシーンのレトロな喫茶店「進々堂」は、是非訪れてみたい場所です。

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『有頂天家族(幻冬舎文庫)』森見登美彦著(幻冬舎)

 同じくアニメ化された『有頂天家族』では、人に化けた狸や天狗が人間の世界で活躍し、糺の森に住む狸の名門、下鴨家の興亡の様子が描かれています。
 本作品でも数々の名所が登場しますが、中でも主人公の狸・矢三郎の祖母が住む狸谷山不動院は知る人ぞ知るスポットです。大小様々な信楽焼の狸が出迎える参道を通り、長い階段を登りきると現れる本堂。清水の舞台と同じ懸崖造りで建てられた本堂からの眺めは爽快です。機会があれば足を運んでみてはいかがでしょうか。

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『森見登美彦の京都ぐるぐる案内』森見登美彦著(新潮社)

 さらに『森見登美彦の京都ぐるぐる案内』では、各作品から抜粋された文章と写真で作品の舞台が紹介されており、旅の気分を一段と盛り上げてくれます。(K.S)

 

〜OKINAWA〜

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『O K I N A W A −しあわせの島々 井上慎也写真集−』井上慎也著(東方出版)

″O K I N A W A″
そう聞いた(見た)だけで、「また行きた〜い!」と思う方は、きっと多いはず。
なぜ?って私もその1人だからです。

 ほとんどの方は、沖縄の持つ美しさ、文化、気候、歴史、たべもののおいしさなど、1度訪れた沖縄で独特の魅力に取り憑かれハマってしまい、中には憧れが高じて移住する方もいるくらい、沖縄には人を引き寄せる力があるようです。

 この『O K I N A W A −しあわせの島々−』は石垣島、竹富島、久米島、西表島を中心に、エメラルドグリーンの海、カラフルで力強い生き物と草花、どこまでも碧い空を「これでどうだ!」と言わんばかりに集めた写真集です。発刊は2002年。 (M.K)

 世田谷区所蔵の井上慎也氏写真集はこちら

 

〜本で旅する知らない国〜

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『Yohjiを愛したサプールーAnother of THE SAPEUR−』SAP CHANO撮影(学研プラス)

 皆さんは実際にアフリカに行ったことがありますか。どんな土地でどんな人々が暮らしているのでしょう。
広大なアフリカ大陸の中部には、コンゴ共和国(首都:ブラザビル)とコンゴ民主共和国(首都:キンサシャ)という2つのコンゴがあります。
 日本の約7倍の面積をもち、その大部分が熱帯雨林のコンゴは、年間を通して最高気温が30度ほどで、人口は両国を併せると約9000万人です。

 そんなコンゴには、90年以上前からこの写真集で紹介する「サプール」という男性のファッション文化があります。それは植民地時代の影響を受けながらフランスのパリのおしゃれな紳士服を着こなしたことをきっかけに、独特の進化をとげてきたものです。今、彼らは「世界一、服にお金をかける男たち」とよばれています。
 実はコンゴではつい最近まで長い内戦が続いていました。家を失い、家族や友人を失い、服を失っての苦しいどん底の中にあった彼らは、武器ではなくサプールで平和を取り戻そうと立ち上がった、ともいわれます。

 平均月収が5千円から1万円といわれる彼らが、生活費を切り詰めてまでも月収の数十倍もする高価なブランドの服を買おうとするのは一体なぜなのでしょう。それは、単なるぜいたくや見せびらかしではない気がします。

 「生き方」や「人としての誇り」を服装ファッションで表現しようとする彼らのエネルギーは圧倒的です。最近は女性や子どもたちの間でもサプールをする人たちがいるそうです。そのしびれるような輝く個性をこの写真集でぜひ感じてみてください。

(S.H)

 

〜絶対に出る……?世界の幽霊屋敷〜

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『絶対に出る世界の幽霊屋敷(NATIONAL GEOGRAPHIC)』ロバート・グレンビル著/片山美佳子訳(日経ナショナルジオグラフィック社)

 このタイトルだけなら手に取る事も無かったかもしれませんが、それを出版したのがナショナルジオグラフィックだったので、一体どんな写真集なのだろうか?と興味がわきました。
 タイトルからすると、今にも恐ろしい何かが出てきそうな、おどろおどろしい写真のオンパレードかと思いきや、掲載されている古城や洋館、教会、廃墟などの写真は、カラーもモノクロもあり、それらは多彩でアーティスティックな雰囲気を醸し出し、次のページをめくるのが楽しみになるものでした。

 日本国内やアジアの場所は紹介されてはいませんが、ドラキュラ城として誰もが知る「ブラン城」や、多くの人が訪れた事があるだろう「モン・サン・ミッシェル」などの有名な観光地も紹介されていて、海外の古い建物巡りもこの本で楽しむ事が出来ると思います。
 タイトルの響きで面白半分で興味を引かれた本でしたが、初めに想像した内容をいい意味で裏切る美しい写真集でした。
 そして、それらの写真に添えられている文章が少ないが故に、人の営みの絶えた静寂なそれらの場所への想像や、歴史への興味をより一層搔き立てる一冊となりました。

 また自由に海外への旅が出来る様になった折には、足を運ぶ候補として、この美しくも幻想的な写真集に紹介されている場所を一つ加えてみてはいかがでしょうか?「絶対に出る……」らしいですが。(M.M)