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「世田谷区家庭読書の日」にお届けするおはなし 第31回 絵本は子どもだけのもの?「ねぼすけスーザ」とのすてきな出会い
- 掲載日2020年9月23日
世田谷区では、「毎月23日は、世田谷区家庭読書の日」として家庭での読書をすすめています。
毎月23日に図書館職員が子どもの本のことや図書館での楽しい出来事をお届けしています。
第31回 絵本は子どもだけのもの?「ねぼすけスーザ」とのすてきな出会い
私は図書館員になりたての頃に広野多珂子さんの「ねぼすけスーザ」(福音館書店)と出会いました。きっかけは、作者の絵本の原画を観に行ったことでした。絵本の絵もきれいですが、原画では、印刷では表現しきれない繊細な筆使いや微妙な色の違いを感じ、いきいきしたスーザにすっかり魅了されてしまいました。また物語の舞台も、日本とは違う暮らしの様子や街の風景で、とても新鮮に感じました。
そんなある日、初めて絵本の読み聞かせを担当することになりました。読み聞かせデビューに何を読もうか、いろいろ悩んだ末に、大好きな「ねぼすけスーザ」シリーズの1冊にしようと思いました。ちょうど秋の始め頃だったので『ねぼすけスーザのセーター』がいいかな、と決めました。当時勤めていた図書館の、児童書担当の大先輩に、これを読もうと思うのですが……と、ドキドキしながら報告したのを覚えています。無事にOKをもらい、練習をして、いよいよ本番当日。とても緊張しながら読み始めました。
街角でステキなセーターを見つけたスーザが、いそいで買い物を済ませ、わくわくしながらもう一度お店に行くと、そのセーターはすでに売れてしまって、ありませんでした。がっかりしながら帰ってきたスーザを待っていたものは……?マリアおばさんがとってもステキなものを用意してくれていました。
読み聞かせ中、マリアおばさんがステキなプレゼントを手にスーザを迎えにきたページに差し掛かった時、前列で聞いてくれていた女の子が本当に小さな声で、ほっとしたかのように、「あっ!」と歓声をあげました。その子もきっと、スーザと同じ気持ちになっていたんだと思います。初めて読み聞かせをした私にとって、忘れられない瞬間になりました。
絵本や児童書はもちろん子どもに向けて書かれたものですが、大人になったからこそわかる面もたくさんあります。子どもの本の世界は、大人にとっても、豊かで深くて、おもしろいです。「子ども向きでしょ。」なんて先入観はとりあえず横において、ぜひ足を踏み入れて欲しいな、と思います。
*現在、『ねぼすけスーザのセーター』は、雑誌「こどものとも」(1997年12月号)での提供になります。
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