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「世田谷区家庭読書の日」にお届けするおはなし 第9回「かぼちゃスープ」
- 掲載日2018年11月23日
世田谷区では、「毎月23日は、世田谷区家庭読書の日」として家庭での読書をすすめています。
毎月23日に図書館職員が子どもの本のことや図書館での楽しい出来事をお届けしています。
第9回 弟に読んでいる幼い自分の声が聞こえる「かぼちゃスープ」
小さい頃、家には絵本だけの低い本棚がありました。兄が二人いるので、私が読むころには既にたくさんの絵本が並んでいました。それから二十年ほど経った今、その本棚はもうありません。けれど、タイトルから本棚での置き場、果てはどんな時に読んだかも思い出せる絵本がたくさんあります。
『かぼちゃスープ』は弟が生まれるとき、5歳の私に祖母が贈ってくれた絵本でした。
『かぼちゃスープ』ヘレン・クーパー さく/せなあいこ やく(アスラン書房)
こんなあらすじです。
森のなかで暮らす、ねことあひるとりす。三びきが作る かぼちゃスープは世界一おいしい! そのスープは、ねこがきりわけ、りすがかきまぜ、あひるがしおで あじをつけることで完成します。ところがある朝のこと。あひるがスープをかきまぜたいと言い出して、家のなかで大げんか。りすは猛反対。もちろんかきまぜ用のスプーンも渡しません。ケンカのすえ、あひるは家を出て行ってしまいます。ねことりすは、あひるを探しに森へ行き……
絵本の細かい内容は忘れても、読み聞かせの声を思い出せる絵本があります。その多くは母の声ですが、この本で思い出されるのは、弟に読み聞かせる幼い自分の声です。また、あひるの「やりたい!」りすの「だめだめ!」というやりとりを読むと、物語に当時のケンカが重なって思い起こされてきます。
絵本は大切なことを教えてくれたり、興味を広げたりしてくれるものでもありますが、一方で思い出と結びつくものでもあるのでしょう。きょうだいと読んだ本、隅から隅まで読んだ本、誰かに贈られた本、誰かが読んでくれた本、勝手に新しい物語をつくった本、取り合いになった本。思い出と結びつくことで、それは自分だけの一冊になっていきます。「家庭読書の日」をひとつのきっかけに、図書館やご家庭で自分だけの一冊が生まれたら、と思います。
*今回は10月に中央図書館で図書館実習を行った大学生が書いてくださいました。