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「 第17回世田谷区子ども読書活動推進フォーラム『戦争と児童文学』」を開催しました
令和5年2月18日(土曜日)の午後1時30分から、中央図書館(教育会館)3階「ぎんが」にて、子ども読書活動推進フォーラムを開催しました。今回は「戦争と児童文学」をテーマに、野上暁氏(評論家・作家)と土居安子氏(大阪国際児童文学振興財団理事・総括専門員)のお二人にご講演していただきました。
第1部 講演会「日本の児童文学は戦争をどう描いてきたか」
講師:野上 暁 氏(評論家・作家)
第1部では、日本の児童文学に焦点を当て、明治期から現代までの主な作品を紹介してくださいました。
明治期には、子ども雑誌「少年世界」(博文館)にて、既に戦争の様子が描かれていました。さらに第二次世界大戦での戦争体験を描いた作品や、広島・長崎に関する物語など、多くの作品をあらすじを交えてお話ししていただきました。ベトナム反戦運動を背景に、児童文学での戦争の描かれ方が変化していったことや、近年の作品では、子どもたちが戦争について調べていく物語や、当事者が子ども時代の体験を回想する物語など、数十冊の児童文学を紹介していただきました。
また、今回の講師2名が編著者となっている『明日の平和をさがす本-戦争と平和を考える絵本からYAまで300-』(岩崎書店)に掲載されている作品紹介もありました。
言葉や文学、芸術の力で戦争のない世界を作っていくことが大切であるとお話ししていただきました。
第2部 講演会「海外児童文学に描かれる戦争と平和」
講師:土居 安子 氏(大阪国際児童文学振興財団理事・総括専門員)
第2部では、海外児童文学に焦点を当てて戦争をテーマとした作品を紹介していただきました。
戦争の加害者意識を描いた作品や、逆に日本の侵略を受けた被害者の視点で描かれた作品、ユダヤ人迫害、難民問題や内戦など、作品のテーマごとに分類して紹介してくださいました。
ポーランドを脱出し、各地を転々とする様子を描いた『チャンス-はてしない戦争をのがれて-』(小学館)について、ユリ・シュルヴィッツの挿絵の多さに、シュルヴィッツがいかに詳細に子どもの頃を覚えていたかが伝わってきて驚いたそうです。文学作品として非常にすばらしい本だとおっしゃっていました。
その他、戦争を扱ったファンタジーや寓話にいたるまで、たくさんの作品を取り上げて紹介していただきました。
第3部 質疑応答・意見交換
第3部は、参加者から提出していただいた質問用紙の内容に回答する形で進行しました。多くのご質問をいただき、参加者の関心の高さが伝わってきました。
「戦争を描いた子ども向けの本は沢山あるが、今大人は戦争をしている。本を手渡す側ができることは何でしょうか」という質問には、戦争のニュースが頻繁に流れている今が子どもに本を手渡すチャンスであり、ブックトークなどを通じて紹介したり、学校図書館でサッと関連本を手渡せるとよい。機会を逃してはいけないとおっしゃっていました。
「今回は児童文学のみのお話だったが、戦争をテーマとしたおすすめの絵本を教えてください」という質問が出た際には、
野上氏には『サルビルサ』(架空社)、『あのこ』(BL出版)、 『まちんと』(偕成社)、 『絵で読む広島の原爆』(福音館書店) 等を、土居氏には『なきむしせいとく-沖縄戦にまきこまれた少年の物語-』(童心社)、 『ウサギ』(河出書房新社)等を紹介していただきました。
アンケートでは、「日本の戦争児童文学の歴史が分かり、大変勉強になり、いろいろ読みたいと思いました」「子どもたちに本を手渡す努力をしていきたいと思います」「中学校で司書をしています。今回のお話で選書のヒントがいただけました。ありがとうございました」等の感想がありました。