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「世田谷区家庭読書の日」にお届けするおはなし 第38回 楽しい文庫通いの日々

世田谷区では、「毎月23日は、世田谷区家庭読書の日」として家庭での読書をすすめています。 

 毎月23日に図書館職員が子どもの本のことや図書館での楽しい出来事をお届けしています。

 第38回 ヘンリーくんとの再会

 今でこそ世田谷区には二十を超える図書館・図書室があるが、私の子ども時代にはまだまだ館数も少なく、残念ながら我が家の近くには無かった。そんな私と本との貴重な架け橋となってくれたのが、近所で開かれていた家庭文庫・土屋児童文庫だった。
 「家庭文庫」というのは自宅の一室などを使った私設図書館で、その当時既に家庭文庫に関わっていらした石井桃子さん、村岡花子さんらに影響を受けた土屋滋子さんが昭和三十年に自宅の一室で開かれたものである。

 彼女のお孫さんが私の同級生だった縁もあり、小学生時代、私達はこぞって文庫に通っていた。文庫が唯一開かれる毎週土曜日の午後は小学校がそのまま移動した様な賑やかさだった。実質の運営をされていたのは数人のお姉さん達(大学の図書館学科の学生さんや卒業生の方々)で、毎週幼児、児童それぞれを対象とした「おはなし会」もあった。時には年長の子どもたちがお手伝いする事もあり、お姉さんの仲間入りをした様で本当に嬉しかったのを今でも覚えている。その場所にいる事が只々楽しく、私も友人と共に開館時間から閉館時間までお世話になっていた。

 時を経る事○十年、縁あって世田谷区の図書館に勤務する事になり、図書館の児童コーナーで文庫で親しんでいた懐かしいシリーズに再会した。アメリカのベバリイ・クリアリー氏の「ゆかいなヘンリーくん」シリーズである。

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『ラモーナは豆台風 改訂新版』ベバリイ・クリアリー作 松岡享子訳 ルイス・ダーリング絵(学研教育出版)

 私が子どもの頃、アメリカの子ども達の生活を生きいきと描いたこのシリーズは大人気だった。当時は第八巻、真っ赤な表紙※の『ラモーナは豆台風』まで刊行されており、各巻鮮やかな色違いの表紙が印象的だったが、それがその色そのままに、図書館の本棚で待っていてくれたのだ。このシリーズに限らずロングセラーの児童書は、その装丁から一気に当時を思い出させてくれるものが多く嬉しい限りである。

 現在は各地で図書館も増え、子供達に変わらず夢を与えてくれている。私自身も、本を好きになっていなければ、今の自分はどうなっていただろう、と考えることがよくある。そして、あの児童文庫を始め、本と関わらせてくれた人や場所、全ての事にあらためて感謝の気持ちでいっぱいになる。

※赤い表紙の『ラモーナは豆台風』は改訂前の書籍になります。現在、世田谷区立図書館では残念ながら所蔵がありません。

 

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