「世田谷区家庭読書の日」にお届けするおはなし 第6回 「ねずみばあさん」
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- 掲載日2018年8月23日
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世田谷区では、毎月23日を「世田谷区家庭読書の日」として、家庭での読書をすすめています。
毎月23日に、図書館職員が子どもの本のことや図書館での楽しい出来事をお届けしていします。
第6回「ねずみばあさん」
みなさんは、子どもの頃の自分の本棚を覚えていますか?
きっと、どなたにも強く印象に残っている本があるでしょう。
わたしには、子ども部屋の本棚の中で「怖い本」がありました。
怖いこわいと思っていると、不思議と目がいってしまうもので、
子どものわたしは、怖い本の背表紙は後ろに向けて、本棚に並べていました。
その中の1冊が『おしいれのぼうけん』でした。
鉛筆だけでかかれた黒一色の絵が、子ども心に大変怖かったのです。
無人の高速道路の不気味さ、火を灯した無数のねずみたち、そして、迫力のねずみばあさん!
しかし、そんな恐ろしい絵でも、怖いものみたさで、何度も読んでもらいました。
それは、大人に反発して友だちと手を取り合ってがんばる子どもたちの冒険物語だったからでしょう。
こわいけど、読みたい。
さとしとあきらと一緒に、読んでもらっている自分も、手に汗にぎって冒険しているのです。
インターネットにあふれる書評の中に、「保育のあり方として現代にそぐわない」という趣旨の意見を読んだときには驚きました。たしかに、時代とともに子どもとのかかわり方は変わってきました。
けれども、いつの時代でも、『おしいれのぼうけん』を読んでもらう子どもたちは、その勇気と友情の物語の中に入りこんで、ただ純粋に冒険しているのだと思います。
目の前に座って、絵本を見つめる子どもたちの目を見ていると、そう確信します。
これからもずっと、読みつがれてほしい1冊です。
『おしいれのぼうけん』ふるたたるひさく/たばたせいいち〔画〕(童心社)