世田谷区家庭読書の日」にお届けするおはなし 第59回 刺激的な思い出!『デルトラクエスト』 

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  • 掲載日2023年1月23日
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世田谷区では、「毎月23日は、世田谷区家庭読書の日」として家庭での読書をすすめています。 

 毎月23日に図書館職員が子どもの本のことや図書館での楽しい出来事をお届けしています。

 第59回 刺激的な思い出!『デルトラクエスト』

 私は決して本を読む子どもには分類されなかったと思います。そんな私でも、寝る間も惜しんで読み込むほど、どっぷりとハマった本がありました。私にとって、それは初めての熱心な読書であり、本を読み切るという達成感を味わえたとても刺激的な思い出です。

 小学生の頃(おそらく5,6年生)、「自分で選んだ図書室の本の帯を作る」という授業がありました。普段、本を読まない私はその授業に頭を悩ませました。帯は、本の見所などを書かなければならないため、本を読まずにその課題をこなすことはできません。そのため、私はその授業が嫌でたまりませんでした。

 先生は、「どうしても書けないって人は、絵本でもいいよー。」と言っていましたが、当時の私はプライドが高かったのか、クラスメイトの中には、大人が読むような厚い本を選ぶ人もいて、絵本を選ぶ気になりませんでした。

 とにかくなにか適当に読みやすい本を見つけなければと思い、図書館の中をぐるぐる回りました。その時です。閃いた!
図書室には一番分厚くて、帯がすぐに書ける本があるぞ!それは、『ハリーポッター』シリーズです。この本は分厚い上に、映画もほとんど鑑賞済みなので、見所も読まずに帯に書くことができます。よし、『ハリーポッター』シリーズを誰かに取られる前に取りに行こう!と思い、探し始めましたが、図書室なんて小学校に入ってから、ろくに利用したことがない私には、どこになんの本があるのかさっぱりわかりませんでした。そして、まったく見当違いのところを行ったり来たり…(昔から、ちゃんと調べる前に行動してしまう悪い癖があります)。やっとの思いで、たどり着きましたが、そのころにはもう一冊も残っていませんでした。どうやらみんな考えていたことは同じようでした。

 いよいよもう絵本を選ぶか仕方なく本を読むしか後がなくなってきた私は、絶望しました。しかし、その時です。キラン!
開いていた窓から吹き抜けた風がカーテンをめくり、昼下がりの日差しが何かに反射して、私の顔を照らしました。その反射の元を見つめると、まるで宝石のような輝きを放っている本が置いてありました。そう、それは『デルトラクエスト』です。

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デルトラ・クエスト〔1〕-1沈黙の森
エミリー・ロッダ作 はけたれいこ画 (岩崎書店)

そのほかのデルトラ・クエストシリーズはこちら 

 

 私はその表紙を見て、「かっこいい。」ただそう感じたことだけを覚えています。その宝石のような本を手に取ってページをぺらぺらとめくってみると、活字がびっしり。本の見返しの貸し出し履歴を見ると、何枚も重なっていて、貸出しが多い本であることがわかりました。そういえば、よく遊んでいる友達もこれを手にしているところを見たことがあるなと思いました。でも、その友達は、こんな活字ばかりの本を読めるような人ではありませんでした(今思えば、みんなこの本がかっこいい表紙だからという理由で借りていただけかもしれない)。普段の私だったら、嫌な顔をして本を閉じますが、このかっこいい表紙に当時の私の自分の「手にしたい欲」は抑えられませんでした(みんなと一緒ですね)。

 こうして私は、『デルトラクエスト』シリーズの第一作目「沈黙の森」を授業の課題の本として選びました。家に帰って、ランドセルからその本を出したとき、その表紙の輝きは図書室で見たときよりも一層強く感じました。とにかくワクワクしました。どんな物語なのか、この表紙の銅一色の騎士は味方なのか、敵なのか。これまでは、ゲームソフトのパッケージでしかそのワクワク感を味わうことはなかったと思います。
 期待を胸に、本を開きました。最初は、何度も同じ行を読んでしまったり、うまく情景が浮かばなかったりと苦労しましたが、だんだん読んでいるうちに登場人物の名前を覚えてきたり、世界観に慣れてきてスムーズに読めるようになり、気づいたら夜ごはんの時間でした。

 それから、流行りのゲームは横において、『デルトラクエスト』を読むのが日課になりました。この話は、主人公の「リーフ」が仲間とともに、影の大王に奪われた7つの宝石を取り返す物語です。今思えば、ザ・冒険ファンタジーな話ですが、当時の私にはそれが非常に刺激的でした。このころから、私のファンタジー好きが始まったのかもしれません。今でも、リフレッシュするときは、本やゲームでファンタジーの世界へ冒険をしに行きます。読み進めていって、ついに5日目くらいで読み終えることができました。読み終えた後の達成感はゲームでラスボスを倒した時よりも感じたため、今でもよく覚えています。「僕にも本が読むことができるぞ」と思った瞬間でした。この本を読んでわかったことは、宝石のようにみえた表紙の一部は本当に本書の中では宝石だったこと、表紙の騎士はその宝石を守っていた敵だったこと、本はゲームよりものめりこめること。この本のおかげで、楽しく本の帯を書くことができました。当時何を書いたのか、今ではほとんど覚えていませんが、この『デルトラクエスト』との出会いと冒険は私の一生の思い出です。

 

「世田谷区家庭読書の日」にお届けするおはなし第1回~第58回はこちら

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